dima
  • 一品更屋展「水、急にして」

    Date: 7 July, 2013
    Venue: hpgrp GALLERY TOKYO
    Concept: Ippin Saraya
    Photo: Wade Thorhaug, Sonomi Urakawa

    時代の先端を走る茶の湯ユニット一品更屋さんが、その名を冠した展示会「一品更屋展」を青山・hpgrp GALLERY TOKYOで行い、2013年7月7日小堀芙由子が懸釜をいたしました。

    展示会の重要な枠組みとして一品更屋さんが提示したのは「水」。
    会場の真ん中に水道管パイプを組み立て作られた正六面体の中を二畳の茶室とし、お客様に涼感だけではない何かを感じていただければと、小堀芙由子は新たな趣向を凝らし茶席を組み立てました。
    キーワード「水」に込められた想い。
    水はすべての生物としての根源的な活動に欠かせないものであると同時に、ひとたび暴れ出せばあらゆるものの命を奪う恐ろしい存在でもあり、特に心に刻み付けられたあの日の記憶は日本中の誰もが忘れることのできないものー。
    床には川久保ジョイさんが撮ったどこまでも静かな湖面の風景が神々しく広がります。その下に、真綿で作られた笹舟の香合、そして金魚5尾がゆらゆらと泳ぐガラス鉢。

    金魚の辿ってきた道は、非常に数奇なものであります。
    1700年前の中国で突然変異によって生まれた、いわば奇形の赤い鮒が捉えられ、その後無数の品種改良を繰り返しながら、中国の支配層に珍重されてきました。
    日本では飼育技術の発達した江戸後期から爆発的に流行し、「金魚すくい」なるものすら生まれ、今や日本の夏の風物詩となっています。
    人間の美意識と商売根性によって、金魚の歴史は連綿と続いてきました。
    現代では丈夫さと低価格から、使い捨てのイベント用や肉食魚の餌になっています。
    どこまでも人間の欲望と共に進化してきた生物。
    長い尾びれを揺らし泳ぐ姿は優雅に見えど、どこか滑稽で悲しさがつきまといます。
    自然界にはありえない、あの色。繊細さ。
    観る者がいることを前提とした、グロテスクなかたち。
    人間の手の内でのみ、生きることを許される、いきもの。
    多くのパラドックスを身に纏いながら小さな水槽の中をたゆたい、私たちを魅了しつづけるその姿。
    それが美でなくて何でありましょうか。

    「水急不流月」水急にして月を流さず。

    金魚のようにひたすらに、運命に身をまかせて生きざるを得ない私たちでも、不動のものが近くにあるというのは大変心強いものです。
    それは私にとっては、お茶なのかもしれません。

    同展示会内で中国茶のお茶会をされた、浦川園美さまに写真を撮影していただきました。
    ありがとうございました。